もう体も精神的にも限界が近づいている母ちゃん。だからできないものはしない・・・頑張りすぎない!!と心に誓ったのに、結局すべてをやってしまっている母ちゃん。本当の馬鹿です。来年はもう少し自分を見極める力をつけよう・・・。
さてまだ胃も頭痛もひどい母ちゃん。その原因の一つに先日書いた生徒のことが絶えず自分の中でひっかかっているはわかっている。2週間ほど前に生きる気力を失っていた彼に追い討ちをかけるように数日前に付き合っていた相手からも別れを告げられた。世の皆がクリスマスで浮かれている時に一人だけ取り残された気持ちになって変な気を起こしてしまわないかが心配でならない、
月曜日にじっくりと時間をかけて母ちゃんはその子の話に耳を傾けた。その後、幾分気持ちも楽になって症状がよくなったらしい。でも鬱病の次の日はわからないのが現実。2、3日に一度、どうしてるか?というメッセージを送ることを心がけている母ちゃん。小さい頃からいつも寂しい・・という気持ちが大きいこの生徒に対して、いつも心は寄り添っているよ!というメッセージだ。
この生徒の人生は複雑で、彼が赤ちゃんの時にお父さんは脳腫瘍で亡くなっている為、今までずっと母親と二人で暮らしてきたのだが、幼稚園の時から”何事も一人ですること”を母親からも祖母からも教育をされてきている為、小さい頃からすべてを一人でやってきた。そして泣くことも許されなかった環境に、彼は自然と何に関しても優等生でいるようになった。母ちゃんが始めてこの生徒に出会った時も、気遣い、振る舞い、そして努力家の彼に日本人と接しているのかと錯覚をしてしまうぐらい何に対しても長けている子だった。
でも彼が大学に入って2年ぐらいした頃から、母ちゃんは何かこの生徒に異変が起きているのを感じていた。今まであんなに熱心に音楽に取り組んでいたのに、(いやその時も一生懸命音楽に取り組んでいた)心がどこかに行ってしまっている感じがしてやまなかった。この頃から体調も頻繁に崩すことが多く、母ちゃんはほっとけなかった。そうこうしているうちにその子が自分から悩みを打ち明けてくれた。今まで誰にも言ったことがなく、今そのことを言おうとしている自分に震えていると言いながら・・・。
それは母ちゃんが想像を遥かに超えるものだった。彼が抱えているというのは”性同一性障害”だった。幼稚園の頃から自分は出世時に割り当てられた性別とは違う性の意識が高く、高校を卒業するまでそれを告白すると周りの友達がみんなショックを受けるから隠していたけれど、成人になった今、それを隠す必要があるのか?と自分に問いただした時に、今まで保ってきた心のバランスが崩れてしまったという告白だった。
今まで母親にも誰にも隠してきた。今はじめてこのことをここで打ち明けたという彼をどうやって守っていけばいいのか、その時の母ちゃんは自分の心臓の鼓動がすごく大きな音を立てて波打っていたのを今でも覚えている。母ちゃんが出会ったどのオーストリア人より細やかで女らしい気遣いができるこの生徒に(この時点ではこの生徒は女性。そう母ちゃんが初めて出会った時は15歳の女の子だった)母ちゃんは、彼がそう思い込んでいるだけなんだと思っていた。だからとりあえずその障害を専門にする専門科医のところに行くことを勧めた。それも1人じゃなくて、2,3人の先生のところに言って診断してもらうことを進めた。
結果は3人の先生とも100パーセント彼はその障害を持っていると診断した。そしてその後、母親、そして周りの人にも話し了解を得て、性を彼の本来の持っているものへと変換する手術をした。この障害を専門に扱う教授によると、性変換してもなかなか自分の思い描いていたものとは違うという感情が多いため、生涯にわたって苦しむことが多いという話を聞いて、それ以来ずっと心配してきた。そして彼が自分から何か言ってくると必ずそれに耳を傾けてきた。
今回彼が話した鬱病というのも幼少時代から違和感を感じていた自分の性が大いに関わっているのではないかと私自身は感じる。だから小さい頃から鬱病を患っているという診断結果にもつながっているのではないかと思う。幼少時代からの家庭環境だけでなく、色んなものがクモの巣のように複雑にからまりあって今に至っているんだと思うと、この出口が何処にあるのかわからない。
だけど彼自身が出口を探し、自分から解決策を模索すべく、色んな角度から治療を模索し、すべてを話してくれる今の状況を逃したくはない。ここで見放すと彼は自分の殻に入ってしまって二度と母ちゃんに、そして人に心を開いてくれないだろう・・・。そうはさせまい。
母ちゃんにできることなど何もないが、それでも母ちゃんは寄り添ってやりたい。生きることを諦めたら、もうそこで何もかもが終わりだ。そうは絶対させたくない・・・。どうか彼が、そして世界の人々が穏やかで平和にクリスマスが過ごせますように・・・心から願う毎日。