クリ子が日本に接する機会はかなり限られている。そして彼は限られた日本人から日本というものを学ぶ。この二年ほどすごく不思議に思っていたことがある。それはクリ子が日本人に会うと急にニタニタかなり気持ち悪い微笑みをし、そして舌足らずな感じの甘えた声で日本語を話すのだ。一体これはどこから学んでいるのかとかなり考えた。
そしてある時、ある結論に至ったのだ。それは私の妹の洗脳力だ。クリ子はうちの妹、ちび太がかわいくてかわいくて仕方がない。ちび太のことを思い出すだけでなんかポワ~ンとしている。このちび太、かなりの魔法を持っているらしくこのちび太に会うとちび太ワールドに吸い込まれていくらしい。
たとえばクリ子は私やクサクサと喋ったり久しぶりに会っても”ハロ~”とひく~い声で声をかけてくる。だけどちび太にあったらもうこれ以上素敵な笑顔なんてできないと言わんばかりの笑顔で飛び跳ね、ちび太とハグをする。そしてこの二人の会話が面白い。二人ともかなりおっとりな喋り方で、そして語尾語尾がかわいく延びている。そして二人は絶えず首を可愛く傾げる。私の前ではそんなことしたことないのになんやねん、あの二人!!周りがあきれるほどである。
彼の舌足らずの甘えた声はそれこそちび太の喋り方とまったく同じだ。すまなかったなぁ・・クリ子。私はあんな甘いキャラクターではないのだ。どちらかというと私は大人の女性を目指してるのだ!いや、ちび太をこうやって振り返ってみるとかなりかわいい奴には違いはない。手紙にはいつもかわいいプーさんやクマさんのシールが張ってあったり、滴の絵が書いてあったり・・・そしてこのはちきれんばかりの笑顔、そら男の人から見たら可愛いだろう・・私からみても女の子、女の子していて可愛いもん。だけどちび太、お願いだからこれ以上をクリ子をちび太ワールドに連れこむのはやめてくれ・・・
ウィーンに帰ってきて約一ヶ月半、今だにクリ子はくま、くま、くま、くま~と何かあると歌ってる。それもとってもかわいい声で。これ知ってる方も多いと思うのですがウタダヒカルが唄っている曲らしい。この前日本に帰った際、ちび太がクリ子にこの曲聴いて~って一回クリ子に曲を聴かせていたのです。私なんてくま、くま~ハイハイわかりました。そしてその一日後にはもうその唄のことなんて忘れていたのに、クリ子はしっかりその唄を覚えていて、ちゃんと正確に最後まで歌うのです。それがボケーと道を歩いていても・・・料理を作っていても・・・あ~この唄がウィーンに広まるのも時間の問題と言っても過言でないぐらいクリ子はウィーンで歌っております。なんで私が教えた唄は覚えんとちび太が教えた曲は一回で覚えるんよ~!!ちび太、すまんがお願いだからクリ子をキミの世界に連れ込まないでおくれ~!!普通の中年男に仕上げたいからさ!! 頼んだわ!